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オマージュ探偵とその助手 ~第三話「ボロネーズ」前篇~

真桐亜里亜、彼女が来てからというもの、事務所の隣にある私の寝室は彼女のものとなり、私は事務所のソファーで寝るようになった。

どっちが所長かわかならい状況だが、自分だけがベッドで寝て、うら若き乙女をソファーで寝させるわけにはいかないので仕方ないといえば仕方ない。

とはいえ、朝食、昼食、夕食、全部私が作るというのは如何なものか、助手なのだからせめて簡単な朝食ぐらい作って欲しいと頼んでみたら、普通の調理では恐らく出ないであろう火柱が龍のように暴れ、龍を彩るかのように煙がモクモクと立ち込めて、軽いボヤ騒ぎに。
さて、出来上がった、肝心の目玉焼きとパンは黒コゲのスクランブルエッグと見たこともない形の炭に成り果てていた。

もちろん、いうまでもなく私が作り直した。

フライパンのなかなか取れないコゲを必死で取っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「亜里亜クン、代わりに出てくれ」
「はい、分かりました。どうぞ、お入りください」
「会いに来ましたわ、亜里亜姉さん」
事務所に入ったなり、その客はそう口走った、どうやら亜里亜と知り合いらしい。
「尋嘉ちゃん、久しぶり!」
「ええ、亜里亜姉さん」
亜里亜を慕い、目の前で彼女と抱き合って感動の再会を味わっているこの女性は、夏目財閥の一人娘で夏目尋嘉というらしい。真桐家のお隣さんで子供の頃からよく遊んだとかで、無二の親友という間柄だとか。
「フライパンを洗っていらっしゃる方が、あの有名な宇宙人探偵の」
「ええ、そうよ。この探偵事務所の所長にして、ウンモ星人の末裔で…」
亜里亜によると、彼女の地元、あの宇宙人も出現するあの高級住宅街で私はすっかり宇宙人として有名らしく、地元新聞でも
「スクープ!宇宙人が地球人と接触!?」と書き立てられたらしく、たちどころに知られる周知の事実となった。
ここぞとばかりに販売された、ウンモ星人を模したグッズ「ウンモ君とウンモちゃん」がかなり人気らしく、他府県からもグッズ目当てにたくさんの人が押しかけているそうだ。だからといってこの私の懐が潤っているかというと決してそうでなく、むしろ涸れるばかり、いっそ使用料でも請求してやてやりたいものだ。
取れないフライパンンの頑固な汚れは、通販で買った強力な洗剤で浸けておき、手を拭きながら椅子に戻ると亜里亜と尋嘉が深刻な顔でなにやら話し込んでいた。
「尋嘉さん、ということは弟の潤君が行方不明に?」
「ええ、昨日の朝「遊びに言ってくる」と言ったきり帰ってこなくって…」
「警察には?」
「もちろん、連絡しました。でも、それだけじゃ不安で」
「ということで、ウチの探偵事務所に」
「ええ」
「所長、早速調査しに神戸へ」
「ええ、面倒くさいなあ。行方不明人なんて警察に任せときゃ…」
「酷い、酷いわ、宇宙人さん!」
「わ、わたしは宇宙人じゃないぞ、それにだな…」
「なんてことをいうんですか。さあ、行きますよ、所長」
耳を引っ張られるという古典的な手法で駅まで連れて行かれ、神戸に着いた私たち探偵一行であったが、肝心の依頼人がいない。
「あれ、夏目さんは?」
「えーっと、さっきまで近くにいたのに、いませんね」
「形態に電話してみてくれるかい?」
「はい」

「もぉしもぉ~し、夏目でぇ~す」
明らかに寝惚けている。
「あ、尋嘉ちゃん、今どこにいるの?」
「いまですかぁ、変な事訊きますね、確か後の席に…い、いない!」
「とにかく、次の駅で降りて、戻ってきて」
「は、はい!」

「所長、やっちゃいました、尋嘉ちゃん寝過ごしたみたいで」
「まさか、いい大人が寝過ごすとはな…」
「ですね…」

それからしばらくして、大量のビニール袋に入った荷物を抱えて尋嘉がやってきた。
「おまたせしました」
「尋嘉ちゃん、それなに?」
「駅弁です、どうぞ」
「見事に寿司ばかりだな」
人数分以上に買われた弁当には全て寿司と印刷されている、そんなに食えっこない、堂考えても買いすぎだ。
「ええ、降りた駅で売っていたのはお寿司しかなかったもので」
「どこかで食べましょうよ」と亜里亜は言ったが、食べるのに適した場所など駅前にあるはずもなく、食べるのはひとまず置いておいて、まず夏目宅に行くことにした。
真桐家のお隣さんといっても、豪邸同士であるものだから隣の家までも距離が長い、まるでアメリカ南部の田舎並みにお隣さんが遠い。
やっと着いた夏目邸、これも真桐邸に負けず劣らずの大きさ、こういう大きな家を見るとああ、世の中はやはり不公平なんだなと思う、私が住んでいた家というのは、まさかのUFO型であり、飛ぶことはいうまでもなく出来ないが、怪しげな照明器具が辺りの煌々と照らし、父はそれを
U…ウソのように
F…ファンキーな
O…お家
という意味でつけたとかいっていたが、私から言わせれば、少々汚い言葉だが、Fはファンキーではなくファッキンだ。
さて、私の宇宙人にまつわる話はさておき、夏目邸ではさっそく買ったお寿司でお腹を満たし、食後のお茶を啜っていると、電話が鳴り、尋嘉が出た。
「やった、繋がったよ」
「どちらさまですか?」
「お、おねえちゃん!!」
「潤、潤なの?」
「うん、やっと逃げ出せたんだ」
「今どこ?辺りに何が見える?」
「う~ん、大きな倉庫ばっかりで、海沿いみたい」
「なにか目印になるものは?」
「あ、交番があった」
「とにかく、おまわりさんに誘拐されたことを伝えなさい」
「分かった」
それからしばらくして、警察から電話があった、どうやらちゃんと保護してくれたようだ。
警察署に赴き事件の概要を訊く、どうやら犯人は潤君に対して一切危害を加えておらず、それどころか、三食きっちり与え、お風呂にも毎日入れ、丁寧に扱ったようで、さらに身代金なども要求することもなかったことから、一体何のために犯人が誘拐したのか全く分からないとの事。刑事は、不可解な事件だと首を傾げていた。
「無事保護されて良かったわね」
「ええ、ありがとう亜里亜姉さん」
「ありがとう亜里亜!」
なぜか、潤君は亜里亜を呼び捨てにする。いや、別に良いのだけれども。
「にしても不思議な事件だったわ」「ええ、ほんとに」とかいう話をしながら私たち句の塗りのセダンに乗り込んだ、助手席に座った私が、潤君にいつどこで誘拐されたんだ?と質問をすると
「誰、このオッサン、なんでここにいるの?」
「潤、宇宙人さんに失礼でしょ、あやまりなさい」
本当にこの兄妹、人を馬鹿にしている。くどいようだが、私はおっさんでもはたまた宇宙人でもなく、名探偵の珠路ランシーである、忘れてもらっては困る。
「ごめんなさい、宇宙オッサン」
完璧に馬鹿にしていやがる、一発頬でもぶってやろうかなと思っていると、我々の車の前にサイドカーが着いたバイクが止まった。
運転手がクラクションをならすと、さもそれを待っていたかのように、黒革のライダースーツに身を包み、頭にはフルフェイスヘルメットを被って誰だかわからない女性が近づいてきた。運転席のドアをバールで叩き割る、飛び散るガラスの飛沫、血塗れの運転士、ドアをこじ開け、車のエンジンを停止し、鍵を道端に捨てた。

つづく
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ジャヴュ・ドッペル

Author:ジャヴュ・ドッペル
えらいとこ見られた
こりゃあもう 百年目 じゃと思いました

あと、このブログは敬称略ですので悪しからず。

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