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第三話「チェルシー君、二階から落ちるって夢を見てビックリした の巻」

魔人、それはもともとは「間人」といわれていた。
悪魔と人間との間に生まれた者という蔑称であるが、ある日を境に「魔人」と呼ばれるようになる、それは今まで間人が使えることは出来ないとされていた魔法が使えるようになったからだといわれているが、どうやら魔法といっても魔女、魔法使いが使うような高等魔法ではなく下等魔法だけしか使えぬようである。

しかし、侮ってはならない。魔人たちの好戦的で残忍な性格と、砂漠という地の利もあってか、魔女も魔法使いも魔人には勝てず、かすり傷すら負わすことが出来ないと言われている。


ともかく、そんな危なげな魔人の砂漠を一人で通ってきたというこのナナセという男は、余程の強者なのだろうとチェルシーは思った。
「チェルシー様、どうされたのです、顔色が悪いですよ?」
「そりゃあ、ナナセさん、魔人の砂漠、あそこを通るのですよ?これほど危険なことはないです」
「へへ、そうでしょう、そうでしょう。私とて怖い」
ニコニコと笑いながら怖いというナナセ、人を不安にさせるのが趣味なのだろうか。
「でもチェルシー様、大丈夫、私が何とかしますよ、へへ」

街を出るとそこには青々と茂る草原地帯が広がっている。
その草原地帯をおよそ10kmほど歩くと、突如砂漠が広がる。そここそがまさに魔人の砂漠なのである。
草負けしながらも草原を抜けると

『キケン、これより魔人の砂漠』

今どき珍しい木製の看板が立てられていた。
この向こうは魔人たちの住むおぞましい砂漠、ここを通って帰って来れたものはいないと言われるくらい、ここは危ない。一説によると魔人とは旅人の脚を千切り、動けなくなった旅人にこう聞くらしい。

「死ぬのは怖いか?」

怖いと答えると、喰われ、怖くないと答えても喰われる。
理不尽なやつらなのである。

「ナナセさん、本当にここを通っていくのですか?」
「ええ、チェルシー様、安全ですよ。私の後についてきてください」

そういってナナセは砂漠の中へと足を踏み入れた。
2時間ぐらい歩いたが一向に魔人共は現れず(いや、そちらの方が嬉しいのだが)世間では足を踏み入れてすぐに殺されると噂されていたものだから、チェルシーは少し拍子抜けしたのであった。
それから、更に2時間歩くと、チェルシーはヘトヘトになっていた。
「あれ、チェルシー様、お疲れですか?休みますか?」
「ハァ、ハァ…でも、魔人が、ハァ、ハァ…来るんじゃ……ないの?」
「ハハ、もう来てます」

すると、ナナセが目の前で砂の中へと引きずりこまれているではないか。
しかし、一向にもがこうとしないナナセ

「ナナセさん!!」

ナナセは砂に引きずりこまれながらも、右手の親指を立てて笑っていた。
ああ、死んだ。死んでしまった。あの残酷で、不気味で下等で、クズと称される魔人に捕まったのだ、ナナセは死んだ。
とチェルシーは思い、悲しみというより、とてつもなく心細くなっていた。

すると、しばらくして、ナナセが砂から吐き出されるかのように出てきた。
傘をさして、ゆっくり、ゆらゆらと風に遊ばれながらナナセは降りてきて
「ふう、久しぶりですねぇ、この感覚」
「へ、平気ですか!?」
「ええ、チェルシー様、平気でございます。質問もバッチリ答えました。」
質問は噂通りあるらしい、ただし、問われる内容が違う。
本当の内容は

「なぜ、ここに来たのか?」

である。
あとは魔人からは
この砂漠を通ったことを他言しないこと、「魔人は旅人の目の玉を集めている」という噂を流せと言われ、もしバラしたり、噂を流さなかった場合、死ぬよりも苦しい目に遭うと脅されたらしい。

チェルシーはナナセに
「彼らはどうしてそんなことを旅人に?」
「それは…」
「それは?」
「それは、多分、魔人たちは自分の家族や、友達との平穏で安寧な生活を護りたいのでしょう。彼らは皆が思っているより知的で、礼節を重んじるモノたちですよ。へへ、だから安心なのです」

「そうですか…」

チェルシーは魔人たちに思い知らされた。
それも自分が、人間よりも下等で野蛮だと思っていた魔人たちに。

彼らは自分よりも立派で、常に家族のことを考え、そして友達を愛し、それを護るため必死で命をも賭す気である、下等で野蛮など偏見以外のなにものでもなかった。

自分に彼らのようなことが出来るのだろうか、その自問に答えることが出来ない。
ああ…なさけない。


チェルシーは俯き加減で砂漠を後にしたのであった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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ジャヴュ・ドッペル

Author:ジャヴュ・ドッペル
えらいとこ見られた
こりゃあもう 百年目 じゃと思いました

あと、このブログは敬称略ですので悪しからず。

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